音楽の話 ー吹奏楽部の思い出ー 3年生の引退した吹奏楽部
1973年の全日本吹奏楽コンクール四国大会が終了しました。熱演むなしく全国大会への切符を手にすることはできませんでした。
3年生の方々は、さぞかし残念であったろうと思います。またこの大会をもって3年生は、引退となります。
季節は、夏から秋へと移り変わっていきました。そして1974年度に向けた新体制作りもはじまりました。新しい部長、副部長も決まりました。そして各パート内では、再編成が始まりました。2ndを吹いていた人は、1stへとさまざまなパート編成が始まりました。
さすが、名門校、チューバ以外のパートは、3年生が抜けても層も厚く安定感があります。特にホルンは、2年生が3人もいます。トランペットも2年生が2人と安定感があります。トロンボーンの先輩は、なかなかの名手です。来年の金管パートは、期待が持てます。もちろん、木管パート、パーカッションももかなりの安定感があります。
不安材料と言えば、2年生のいないチューバ、ユーホニアムくらいでしょうか。「うーん、ユーホの彼は、結構、上手なので大丈夫でしょう。」
すると、唯一の不安材料は「わたし」でしょうか。
2年生のいないチューバは、いよいよ一人ぼっちです。不安でいっぱいです。トロンボーンにトランペットにホルン、あー、たくさんいるパートが羨ましい。
そんな頃、先輩たちからの厳しいミッションがありました。「誰でもいい、早急に、部員を募集しろ」と。
とりあえず、わたしは、同じ小学校出身の友人をあたることにしました。まずは、小学校3年生からの仲の良かった友人ともうひとりを引き入れることに成功しました。
そんなことをしているうちにどんどんと同じ小学校からの知り合いが入部することになりました。
4月から入部している同じ小学校のしかも同じクラスだった友人のトロンボーンとトランペットに加え、チューバ2人、ユーホ1人、トランペット2人が、9月以降の入部となりました。そのうちのトランペットの1人は、のちに弦バスにコンバートされ私のパートに加わることとなります。
木管パートにも同じ小学校、隣町の小学校の出身の女子の入部がありどんどんと同級生が増えていきます。
独りぼっちだった私のパートも4人の大所帯となりました。人数だけは、とりあえず揃いました。しかし、1年生の素人の集団です。そのうえ、4月に入部したばかりの私がパートリーダーとなり新入部員に楽器の持ち方から教えます。
3年生が抜けても頼りになる2年生のいるパートと比べたらだめだめパートです。
そんな中、顧問の先生をはじめ2年生の先輩方は、早くも来年のコンクールにむけてリベンジに熱く燃えています。
顧問の先生は、音大に進んだOBの方々とどうやら来年の自由曲の選考を始めているようです。
11月あたりだったでしょうか。まだ冬休みにもなっていない頃です。
新しい譜面が配られました。来年の自由曲です。タイトルは、フランク作曲「交響詩呪われた狩人」です。
Wikipediaによると以下のような内容です。
作曲 フランスの作曲家 セザール・フランク(1822~1890)
フランクは生涯で5曲の交響詩を残したが、この作品は最晩年の1882年に作曲され、翌1883年の3月31日に国民音楽協会で初演された。
この作品は、18世紀のドイツの詩人ゴットフリート・アウグスト・ビュルガー(Gottfried August Bürger)のバラードに基づいており、教会のミサに出かけず、狩りに出かけた伯爵は、その冒涜によって永劫の罪を受けてしまうといった内容である。
冒頭のホルンに続いて、聖歌風の主題が現れ、やがて角笛を思わせる主題が取って代わり、狂騒的に展開してゆく。演奏時間は約15分である。
配られたチューバの楽譜に目を通します。1枚目、2枚目と目を通していくと驚いたことに楽譜に『SOLO』と書いてあります。
「えっ!、何かの間違いでは、譜面、間違えた?いや、ちゃんとヘ音記号だし、何よりTubaと書いてある...。
そのうえ、SOLOの最高音は、五線をたどっていくと「高い”C!”、チューニングの”B♭”の一オクターブ上の一度上です。」、間違いではないようです。
こんな音、で・でない。吹いたこともない、吹こうと思ったこともない、どうするんだ!!、先輩方は、リベンジに燃えているというのに、よりによってチューバにSOLOのある曲を選ばなくても...。」
各パートの先輩方は、さっそく、それぞれ譜面に目を通し話し合いを行っています。
トロンボーンの先輩がわたしのところにやってきました。『チューバのSOLO』は、1stトロンボーンとのデュオのようです。
トロンボーンパートは、ちょうどチューバの1オクターブ上となっています。
先輩も、さすがに”高いC”は、苦しい音域のようです。が、先輩なら大丈夫でしょう。
さてトロンボーンとチューバのデュオとはいえ、このSOLOは、曲想からチューバに重きを置いているようです。
「あーっ、どうやれば、こんな高い音、出るんだ。練習しても出そうな気がしない...。」
やっと、忌まわしい16分音符とシャープから解放されたというのに今度は、チューバのSOLOを曲を吹きこなさなければなりません。
しかもリベンジに燃えている来年度のコンクールの自由曲なのです。そして『チューバのSOLO』の部分は、間違いなくこの曲の重要な部分です。
まさに「狩りに出かけた伯爵が、その冒涜によって永劫の罪を受けてしまう」、タイトル通り「呪われた」の重要な部分なのです。
あー….「呪われた狩人、いや、呪われてるかも…。」
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